以下の質問内容について「ルール」に反していると思われる部分を選んで下さい。
ご連絡いただいた内容が、弊社以外の第三者に伝わることはありません。
Re:短編小説
真祇
[ID:aonisukuhana]
『いつかもう一度逢う日まで』
道路の真ん中で立ちすくんでいた子供を突き飛ばしたのは、とっさだった。
後の事なんて、考えてもいなかった。
静かだった。音がなかった。
近付いてくるトラックが、酷くゆっくりに見えた。
ああ、わたし死んじゃうのかな。
トラックにぶつかる。衝撃。
それから、もう何も分からなくなった。
「…ぅぇ………ぇ〜ん…」
ああ、泣いてる。ユキが泣いてる。
側にいかなきゃ。泣き虫なあの子の側に。約束したのだから。『ずっと一緒にいる』って。
夕暮れの赤い光。微かな冷たさを含んだ風。シャラシャラと鳴る木々のざわめき。足を撫でる下草の感触。絡めた小指から伝わる体温。ユキの笑顔。
約束をした。一緒にいると、永遠に離れる事はないのだと、
春も、
夏も、
秋も、
冬も、
ずっと。
側にいかなきゃ。なのにどうしてだろう。からだが動かない。
ゆっくり目を開けると、泣いている小さな子供がみえた。わたしが突き飛ばした子供。ユキじゃない。
ああそうか。わたしはトラックに跳ねられたんだ。
わたしは、死んじゃうんだ。
だってもう何も聞こえないの。何も見えないの。
でも、わたし後悔はしてないわ。死ぬのは悲しいけれど、寂しいけれど、それだけはちゃんと、胸をはって言えるの。だから……
ユキ…幸人。どうか、どうか悲しまないで。
『ずっと一緒にいる』って約束したのに、守れなくってごめんなさい。
わたしの躰が滅んでも、魂が空に消えても、心だけは離れずに、ずっとずっと側にいるわ。貴方の心に、寄り添っているわ。
きっと、きっと永遠に。
だからどうか、嘆かないで。強く強く生きてね。わたしの分まで、沢山のモノを見て、体験してね。わたしに出来ない事をしてね。
いつか貴方がわたしの所へ来た時に、貴方が見て、聞いて、感じた沢山の事を教えてね。
大丈夫。ほんの少しの間、お別れするだけだから。きっと10年も20年も、70年も80年も、あっというまよ。
だから今は、さよなら、ね。
前回投稿作の女の子(ルカ)sideの話です。言われなきゃわかんねぇよ、な話ですみません(汗)
やっぱり一人称で書くのは苦手です……。
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。
戻る